神の雫
その時、ばんっとドアが乱暴に開いた。


「僕の鈴蘭!!もう準備は出来たかい!?」


「武光さん」


そこには、袴姿の長身の青年が立っていた。
青年は愛しい少女のそばにいる老婆を見つけると、まるで汚いものをみるように顔をしかめた。

「おい、ばあさん、勝手に入るな。誰の許可を得てここにいる。」

そう言うと、武光は菊乃の着物を掴み、乱暴に少女から引き離した。

菊乃はよろめき、転びそうになったのを慌てて小峯が支えた。

「おばあ様!!」

菊乃に駆け寄ろうとした鈴蘭を後ろから無理矢理抱き締めると、武光はさらに老婆に罵声を浴びせる。

「ほら、さっさと出ていけ。もう僕の鈴蘭に近づくなと言っただろうが。
ったく、式に参加させてもらえるだけありがたいと思えよ。
この老いぼれの死に損ないが!」


なにかがぷつん、ときれた音がした。


「…今、なんつった」

「鈴蘭?」

「あたしの大事なおばあ様に、今なんて言ったかって言ってんのよ!」

そう叫ぶが早いか、鈴蘭は武光の腕をすり抜た。


あ!鈴蘭お嬢様!!

小峯がそう思った時には時すでに遅し。


白無垢から飛び出したそのか細い脚は、次の瞬間には武光の後頭部をクリーンヒットしていたのだった。


ガコンッ!!

「がはっ!」

ズウンと無様に前のめりに倒れた武光。





可憐な少女はこうみえて実は武道の有段者。

結婚初夜を待たずして、花嫁にノックアウトされた花婿だった。




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