初恋タイムスリップ(成海side)



カチ カチ カチ カチ


医局の時計の秒針の音が


やけに大きく感じた。




この子の言うことを信じていいのだろうか。



俺はソファーに座って、少し考え込んでしまった。



女の子は、俺の前に立って、


じっと俺のことを見つめていた。




「俺はね、まだ研修医なんだ」


この女の子が幽霊なのかもしれないけど、

とりあえず、自分の気持ちを伝えようと思った。




「研修医生活が終わって、ちゃんと医師になったら、

美音に会いに行こうと思っていたんだ。


だから、まだ・・」


「これ」



女の子は、両手を差し出してきた。


その手には、白いグランドピアノの形をした

オルゴールが乗っていた。



「なんで・・これを君が?」





女の子は、ゆっくりと蓋をあけた。

すると、美音があの時に弾いた曲が、

静かな医局に流れ出した。





「私が壊してしまったの。



直しておいたから、これを美音に渡してほしい。



今日、美音の誕生日なの」







< 119 / 143 >

この作品をシェア

pagetop