万年樹の旅人

 脳裏にふとルーンの笑顔がうつった。

 最後、自分をユナ、と呼んでくれたときの笑顔だった。

 ふと窓の外を見やると、後ろ姿のニコルが、隣のおばちゃんに何か話しかけられているところだった。話好きで、世話好きのおばちゃんに驚いたふうに、ニコルがたじたじとしている。上品な衣を身に着け、それでも嫌がるでもなく話し込んでしまっているニコルを見て、ユナの頬が自然と綻んだ。

 やがて懐かしい歌が再び流れてきた。

 目を細めて、窓の外を一瞥する。

 もう空はすっかり夜の景色に変わっていた。銀砂をぶちまけたような満点の星空を見ながらユナは深呼吸をする。


 ラムザ爺さんの声に合わせて、ユナも静かに歌い始めた。

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