さくら一粒
「…もったいないな。」

せっかくの話だと分かっていても気がのらない。それ以上に興味が無い。

今更知らない人とゼロから恋愛をしようだなんて面倒臭い。


視線を外に逸らして頬杖ついた私にあなたは言った。

「じゃあ、僕は?」

突然のセリフに私は怪訝そうな表情をしてたに違い無い。

それでもあなたは満面の笑みで自分を指しながらもう一度同じセリフを言った。

「僕はどう?」

友人として付き合ってはきたけど、そんな奇妙な提案をまさか私にしてくるとは思わなかった。


何か企んでる?


疑惑をたっぷり含んだ視線と相変わらずの険しい表情で聞いてみた。

「なんで?」

「気心知れた僕なら、長続きするかもしれないじゃん。スタートもゼロからじゃないっしょ?」

そりゃそうだ。

言う事はもっともだし、私が一番懸念する場所はクリアしている。

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