恋愛の条件
「やめてよ、沙希。絶対に言わないで!」

まだニヤニヤする沙希を懇願するように睨む。

「ハイハイ♪」


(どうしてこう人の傷をえぐるようなことばかり言うのよ)


「まぁ、奈央はすごく忙しくなると思うし、山下と別れて正解だね。海外開発はエリート揃いだからすぐにいい男できるわよ~」

「別にそんなこと期待してないわよ。しかもまだ内示も出てないのに……」

浮き足立つ自分に言い聞かせるように言う。

「とりあえず、またランチでね?その時に山下のこと聞くからな」

しっかり釘をさすところは流石だ。

そうだった、とデスク越しにあやが頷いている。

忘れてくれればいいのに、と心の中で嘆くが、奈央の心は既に新しい部署への異動のことでいっぱいだった。


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