恋愛の条件
「今日はもっと忙しくなりそうよなのよ……」

五十嵐の動揺にも気付かず、奈央は続ける。

「サイバーマイクロ社が急に都合をつけてくれて、明日プレゼンがあるらしいわ」

「えっ!?サイバーマイクロ社のケント氏ですか?アポ取れたんですか?」

「えぇ、黒沢チーフがね」

「さすがだなぁ。で、チーフは?」

「山内課長とミーティング。もう少しで終わると思うわ。何か用でも?」

「いえ、別に……」

奈央の口調が少し冷たくなるのを感じ、五十嵐は口ごもった。

「プレゼンの準備だけど、五十嵐君、システム設計のページまとめてくれる?私、そこは専門じゃないのよ。基本計画の方は私がするから」

「はい、わかりました」

奈央に資料を渡されたとき、ふわっと甘い香りが漂った。

五十嵐はつい、奈央の後姿をじっと見つめる。

薄いシルク素材の細身のシャツに、身体のラインがピッタリ出るタイトスカート。

捲り上げた、袖から見える細く白い腕はつい掴みたくなる。

早くジャケットを着てくれないだろうか、仕事に集中できない、と心の中で呟いた。


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