恋愛の条件
「黒沢チーフってサイバーマイクロ社の本社に彼女がいるんですよね?」




「……えっ?」




五十嵐の唐突のことばに、キーボードを弾いていた手が止まった。

心臓がドックンと大きくなる。


(彼女……?)


一度止まったかに思えた心臓は、ドクン、ドクンと血液を送り込む。


(彼女……いる、の?)


「すっごい美女らしいですよ。一時噂になったじゃないですか~」

「へぇ、そうなんだ」

ちゃんと返事ができているだろうか、手にじっとりと嫌な汗をかく。

「しかもとっかえひっかえって話ですけど。さすがですよね、アメリカでもモテモテなんて。黒沢チーフの武勇伝はよく聞いてますけど。そう言えば、広瀬さんも口説かれてましたよね?」

探るように五十嵐が聞いてきた。

「えっ?あっ、私?」

急に自分に振られ、奈央の思考がついていかない。

「俺一回邪魔してしまったじゃないですか?」

「何言ってんの?あれはチーフが私をからかっていただけよ…」

「本当ですか!?」

青ざめる奈央とは対照的に、五十嵐の表情が急にパァと明るくなった。

五十嵐が何か奈央に話かけていたが、彼女の耳には一言も入ってこなかった。

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