恋愛の条件
(会いたくなくて、せっかく時間をずらしたのに……)


修一は奈央の質問に答えず、煎れ立てのコーヒーをゆっくり嚥下する。

その双眸はじっと奈央を捕らえたままで。

「お前ってわかりやすいよな?何かあると次の日は絶対早く来るのな?」


(何で知ってるのよ……)


「何かって…どういう意味?」

奈央は平静を装いながら落としたチップをひとつひとつ拾った。

「修こそ時差ボケ?それともこんな早くから仕事?」

昨日修一はかなり飲んでいたので今日は絶対に遅く出社すると思っていた奈央は、その予想が外れ困惑した。

「いや、別に早く来る必要はなかったけど……」

修一は奈央の傍にしゃがみこみ、最後のチップを取り奈央に手渡した。

「奈央が来るだろうと思って早く出てきた」

「……。」

「お前に会いたくて来た」

「な、何?そんなに仕事をおしつけたいの?」

奈央は修一の言葉の意味を誤魔化しながら、思わず後ろずさる。

「茶化すなよ……」

「手…離して……」

「イヤだ」

「イヤだって……修、何考えてるの?」

「お前、何でそんな逃げんの?」

「何でって……」

「こっち向けよ?」

「ヤダ……」

「向かないとキスするぞ?」

「///何言っ……」

奈央が振り向いた瞬間、大きな影が落ち唇が塞がれた。


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