恋愛の条件
つい修一のことを思い出し、何を比べているのだろうか、と苦笑いがこみあげてくる。

それを誤解したのか、片桐は自嘲気味に呟いた。

「悪い。本当はマナー違反だよな?一本だけ許してくれ。これでも緊張しているんだ」

「……は?」

どこが?と問いかけてまじまじと片桐を見る。

「思っていることが顔に出ているぞ?どう口説こうか迷ってんだ。少しは察しろ」

「は、はい。すみません」

今から口説くと宣言されて何故自分は謝っているのだろうか。

「何か飲む?今日は無理強いしないけど?」

絶対に緊張なんてしていない様子で片桐がメニューを奈央に見せる。

「少しだけ、飲みます……」

今日は、飲みたいというより、酔いたい気分だ。

警戒心も全て捨て消し去ってしまいたい、奈央はそう思った。


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