恋愛の条件
飲み物を注文すると、予め片桐が予約しておいたコース料理がスタートされた。

先付けから煮物、そして食事まで一品一品が繊細で優しく、少食な奈央でも自然と箸が進んだ。

口が蕩けるようなこの料理のせいだろうか、目の前の片桐と身構えることもなく普通に会話をしている。


(不思議……心がすごく落ち着く)


最初の頃とは随分変わったものだ。

片桐とはお昼どころか一緒の部屋にいるだけで手に汗握るほど緊張していたというのに。

今は、狭い個室でこの能面のようなキレイな顔と対座し、羨む様な懐石料理を堪能している。

片桐はこういう席は慣れているのだろう。

このコース料理ひとつ、奈央を気遣っていることがわかる。

それでいて奈央に気負わせないようくだけて振る舞い、奈央の警戒心を少しづつ崩していく。

気付くと奈央は、陶然とした顔でこの時間を楽しんでいた。


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