恋愛の条件
13.幸せの条件
昨夜は殆ど眠らず、というより、寝かせてもらえず、奈央は遅刻ギリギリで出社した。

修一はというと、朝一で打合せが入っているらしく、奈央より1時間早く出社していた。

奈央が起きると修一は既にネクタイをしめていて、すっきりとした顔をしていた。

朝食も作ってくれたようで、どこにそんな体力が、と呆れていると、朝からキッチンで押し倒されそうになり、奈央の準備が遅れてしまったのだ。

昨夜のことを考えると、皆に言ってしまいたい衝動にかられたが、とりあえずまだ結婚のことは内緒に、ということで、指輪はまたCartierの箱の中へとしまわれた。


そして、奈央はというと、朝からデスクでパソコン画面を開いているものの、手は止まったままで、陶然としていた。

「広瀬さんどうしたんでしょう?」

「う~ん……朝からこんな感じですよね?」

「珍しく遅刻ギリギリだったみたいだし……」

「WILのプレゼンも控えていて、普通だったら手が千手観音のように動いているのに……」

「まだ調子悪いんじゃないでしょうか?」


五十嵐と佐野がこんな会話をしていることも気にならない様子で、奈央は妄想の世界へと旅立っていた。


(あぁ、どうしよう……仕事に身が入らない。しなきゃいけないことはいっぱいあるのに、顔がニヤケてしまう)


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