恋愛の条件
スリープ状態のようにパソコン画面が黒くなり、自分の顔が映った。

あぁ、やっぱりカールがとれていると、げんなりとする。

だから雨の日は嫌いなんだ、と天気に八つ当たりしても収まらないのは分かっていた。

そして、この苛立ちが雨の所為だけじゃないことも……

大きく溜息をつき、背もたれに身体を預けたとき、ふんわりとバニラフレーバーのコーヒーの香りが鼻をかすめた。

「おはようございます。奈央さんのお気に入りのコーヒーじゃないけど、どうぞ?」

愛用のコースターの上にそっと奈央専用のローズピンクのマグカップが置かれた。

見上げれば、後輩の崎本あやが、にっこり笑っている。

「あやちゃん、おはよう。わざわざ淹れてくれたの?ありがとう」

「自分のついでです。だから今日はバニラフレーバーで我慢してくださいね」

あぁ、持つべきものは可愛い後輩、と奈央も彼女に笑い返した。


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