恋愛の条件
少し機嫌を直して最初の一口をすする。

いつものコーヒーではないが、今日に限っては微かに甘味の残るバニラフレイバーの方が気分を沈めてくれた。

「どうしたんですか?今日は始業ギリギリだし、イラついてません?奈央さん、生理?」

大人しそうな顔の割には、先輩の奈央に対してずばっと物を言うところが彼女を気に入っているところだが、今日はほっておいてほしい。

「別にイラついてなんか……今日が雨だったからよ」

「ふ~ん」

これは何かあった、ランチの時に聞かなきゃ!なんて台詞を残し、自分のデスクに戻っていくものだから、思い出したくもない金曜の夜のことを思い出してしまう。

(もう!仕事、仕事!思い出さない!!)

頬を軽く叩き気合を入れ、午前中に仕上げるべく、営業からの依頼とクライアントからのレポートに意識を集中させることにした。

だが、その集中力も、一時間も経たないうちに切らされることになる。
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