恋愛の条件
「奈央、半年振りに会ったのに申し訳ないけど、今日はこれで千夏連れて帰るから」

「えっ、山下さん、私大丈夫だから」

「俺が大丈夫じゃないっ!」

そう言い放ち、佐野のコートを手にとり、彼女を立たせようとする。

彼女がどうしたらいいのかわからないといった面持ちで困っていると、急に奈央が佐野を抱き寄せた。

「キャッ……」

「裕樹、あんたちゃんと佐野さんのこと大事にしているの?」

「してるよっ!奈央、はなせよ」

「佐野さんが泣いているのもあんたが原因じゃないの?」

奈央が山下をきっと睨み上げる。

「-----俺?」

「女はねぇ、些細なことで不安になるんだから!もう、裕樹といい修といい……」

そうなのか、と山下は佐野をチラっと見る。

佐野はぶんぶんと慌てて頭を振り、山下を見つめる。

「もうかわいいなぁ、佐野さんは!」

奈央はぎゅうっと佐野を抱きしめ、離さない。

「おい、酔っぱらい!」

「別に酔ってない!」

「十分酔ってるだろ?沙希、何とかしろよ?」

「ヤダね」

助けを求めた相手が悪かった。

沙希は、この状況を楽しんでいるのだろう、一人ビールを飲みながら傍観している。



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