恋愛の条件
「奈央、自分が黒沢と喧嘩しているからって俺にまで当たるなよ」

「なっ----」

どうしてみんな自分が修一と喧嘩していることを知っているのだろうか?

「何で裕樹がそんなこと知っているのよ!?」

「ったく。お前ら二人に振り回される俺の身にもなれ!人のこと言う前に自分のこと解決しろよ?」

山下はさめざめとした口調で奈央に言い放つ。

昔はもっと優しく諭してくれたのに、と奈央もカチンとくる。

「裕樹に言われたくないわ。裕樹もその巨乳ちゃんを誰にも取られたくなかったら、ちゃんと大事にしなさいよっ!」

「ひ、広瀬さん!」

奈央の大きな声に、居酒屋にいた客の視線が佐野に集まる。

「奈央!」

山下はその好機の視線から佐野を守るように彼女を奈央から奪い、自分の方へと引き寄せた。

「もう、帰るぞ」

「何で~夜はこれからなのに」

沙希がからかうように聞いてくる。

「猛獣の檻に子羊を入れておくバカがいるか?沙希も片桐さんに迎えに来てもらえ」

「何でそこで片桐が出てくるのよ?」

一瞬沙希の低くなった声にビクっとする山下だったが、それはあえて無視し、一万円札をテーブルの上に置いた。

「山下さん、私が……」

慌てて佐野が自分の財布を出そうとすると、山下は優しく佐野に微笑み、いいからとその手を取った。

「じゃぁな。奈央かなり酔っているから早々に切り上げろよ?」

「余計なお世話よ」

奈央はふんっと顔を横にそむけ、また焼酎に手を出した。

「一条さん、広瀬さん、すみません。お先に失礼します」

佐野は申し訳なさそうに何度もこちらを振り返りながらも、山下に引きずられるように連れていかれた。

チラっと見えたその横顔がすごく幸せそうで、奈央の心は切なくなるも、ほわっと温かくなった。



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