恋結び【壱】



遥、遥、遥…。

あたしは頭の中で遥を呼び続けた。
目ざすは、水城神社。
そこまでの道が暗くて、目を疑う。

パジャマが風を通して、肌寒い。
だけどそんなことどうだっていい。

怖いんだ。
早く、温もりに会いたい。
会ってすぐ温もりに包まれたい。


あたしに不安が次から次へと襲ってくる。

翔太くんが追って来るんじゃないか。
あたしを見つけて“奴等”と同じ様に何かを吐き捨て、あたしに罪悪感だけ背負わせて消えていくのか。

怖くてたまらない。


ワオーン。


ビクッ。

どこからか聞こえた犬の遠吠え。
それだけなのに、ビビってしまう、愚かなあたし。


まだ、まだ着かないの?

こんなに遠く感じたのは初めてだった。
いつもなら直ぐ着くはずなのに、どうして。

逢いたいって思ったときに。
助けて欲しいときに。

そんなときに限って…。


息が上がる。
苦しい。
苦しくて、苦しくて、たまらない。
辛くて、辛くて、たまらない。
怖くて、怖くて、怯えてしまう。


やっと、石段まで辿り着いたのに、あたしの体力は限界で。

あたしは二段目のところで、崩れてしまう。

あと、もう少しなのに。
ここまで来たのに。

冷たい風があたしを包み込む。

独りは嫌だ。

また、独り。
あたしはいつもそう。

大事な存在から見離されて、独りになってしまう。

これで何度目だろうか。

あたしは何度、独りになって、真っ暗な闇の中、さ迷えばいいのだろう。

わからないよ…。


「……遥…っ…」


頬に流れ、顎から落ちて行く雫。
泣いているんだ、と、この時わかった。

涙は止まることを知らないかのようにどんどん流れてくる。


怖いよ、怖いよ。


「……もう…独りはっ…嫌だよ…」


あたしの声は、消えるように響いた。
暗闇の中、あたしの泣き声が虚しく聞こえた。

きっと自分の泣き声で聞こえなかったんだと思う。

現代には似合わない、下駄の音が。


「…君は独りじゃないよ」


綺麗な声。
下駄の音。

きっと、そう。
ううん、絶対そうだ。

逢いたかった。


「……遥…」




独りは寂しい。
だけど。
独りのあたしを遥が見つけてくれるなら。


独りも悪くないなんて、少し思った。



「…遥…!!」


翔太くんじゃ、駄目なんだ。
遥が、いいんだ。






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