小さなあいつと大きなあたし。

それから特別なこともとくになく、あっという間に入学式の日を迎えた。




「おーはよー」




「おはよ。忘れ物とかない？大丈夫？」




キッチンから心配そうに話しかけてくるお母さん。




「多分大丈夫！」




「多分って…まぁいいや。あとで入学式行くから。遅刻するんじゃないよ」




「はいよっ。え…赤飯？」




「今日はあんたの大事な日だからね。ちゃんと食べなよ」




「ありがとう！いっただきまーす！」




「お姉ちゃんうるさい」




ソファには妹の和穂がのんびりテレビを見ている。




「かず、あんた遅刻するよ」




「私はお姉ちゃんと違ってしっかりしてるから大丈夫」




「どうだかね…」




「かーず！あんたも早く朝ご飯食べなさい」




「はーい」




井川家は毎朝騒がしい。




あたしとかずは歳が近いせいもあって仲は良いけど喧嘩ばっかりでお母さんがいつも間に入る。




お父さんは仕事の事情で海外に出張中。




会えなくて寂しいけど、毎月一回届く手紙を読んで応援してるんだ。




「食べ終わった♪もう行くね」




「気を付けて行ってらっしゃい」




「はーいっ！行ってきます！」




勢いよくドアを開け、自転車で学校に向かった。