裏切りの足音
「それは知ってる。けどその後、会おうと思ったら会えたんじゃないの? アンタ、少し避けてたでしょう?」

「…否定はせんがな。しかし精神を病んだ母親に、好んで会おうとする子供はなかなかおらんぞ」

「それでも寂しかったと思うわよ? カノンさん。ただでさえ、会える者は限られていたんだし」

「ふんっ」

ソッポを向いてしまったマカを見て、ヒミカは肩を竦めた。

「まあまあ。とにかく裏切り者のことは今、キシさんとルナの二人で調査を続けています。僕とヒミカさんも調査に戻りますね」

アオイは立ち上がり、ヒミカの腕を引っ張った。

「…そうね。それじゃあ新しい情報が入ったら、また連絡をするから」

「ああ」

二人が出て行った後、マカは深く息を吐いた。

「裏切り者、か。…本当に何が目的でマノンに協力しているんだか」

マカは立ち上がり、窓を開けた。

生温い風が、マカの頬を撫でる。

暗くなる空に、赤い三日月が浮かんでいた。
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