記憶混濁*甘い痛み*3

しんしんと2日間降り続いた雪は、クリスマスイブである今日の朝には止んだものの、どんよりと厚い雲はNYの空にいすわっていた。


ひとつの命が消えても、何も変わる事はなく時は過ぎた。


友梨は談話室のクリスマスツリーの前に、ポツンと1人で床に座っていた。


手にはオーナメントが握られている。飾りの途中で疲れてしまったらしい。




「深山咲さん?風邪をひきますよ」


和音がそう声をかけたのは、午後2時過ぎの事だった。


友梨の状態を見た空也が狩谷に相談し、和音を呼んだのだ。


「…条野さん」


けれど和音の声が聞こえても、友梨は立ち上がる事が出来なかった。
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