鳥籠の姫【短編】
鳥籠の姫



もう何年経ったのだろうか。
同じ風景、同じ匂い。
人形のようだ、と感じた。
手足の自由は手錠と枷でつながれた。


キィとドアが嫌な音を立てて響く。


「ねえ、彩夏………時間だよ」


あ、ピエロにならなくちゃ。
ピエロにならなくちゃ。
ピエロにならなくちゃ。


眼鏡の奥に潜む醜く歪んだ恋情が、私を壊すんだ。
かたかたと、震える体を抱き締めて精一杯微笑んだ。


「おかえり……なさい」


「ただいま、いいこにしてたかい?」


目の前にいるご主人様。
首輪をつながれ、引き寄せられる。
手には包丁、あ…………。



キスをしたの。
自分から。
で、緩んだ手を絡めて。


「バイバイ、ご主人様」



赤いシャワーみたいにならないんだね。
赤い水道水だ。貫通すれば、私にも飛び散った。
赤い赤い私達。歪んだ、醜い恋の色よ。



手錠の傷よ、籠の私よ。
もう、元には戻れないけれど。



バイバイ。


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