初恋が終わる頃に





気を遣ってくれたのか、それ以上何も言ってはくれなかった。



刻々と出勤時間に近づいて、あたしは喫茶店の制服に着替えると、タイムカードを通す。



郁人もその時は既に仕事に戻っていて、明るく接客をしていた。



「強いなぁ」



なんてポツリ呟いた瞬間、カランと鳴った扉の音に反応する。



「いらっしゃ…」



「帰りました…瑞樹ちゃん?」



てっきりお客さんかと思い、声を上げたがその姿を見た途端、思考が止まった。



…店長。



あたしは店長の姿を見て、一瞬後ずさりしてしまいそうになる。



店長もあたしの姿を見て、当然驚きが隠せないようだった。



郁人はあたしが来る事伝えていなかったんだ…?





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