はらり、ひとひら。


起きるにはまだ早いけれど、眠るよりは楽だろう。

しかし無闇に音を立て主様を起こしてしまうのも忍びない。


どうするべきか、考えて向かった足どりはなんだか重かった。


「蛟。いますか」


5拍おいても、返事はない。襖を開けるまでもなかった。
嘆息し、襖にかけた手をだらんと下ろす。


……もう、何日帰ってきていないのだろう。

数えるのも億劫だったが、数年同じ屋根の下暮らした仲間だ。連絡もなしに突然いなくなられて、気にしないほど冷酷にはなれなかった。

放浪癖はもともとひどかった。
帰りを待つのが馬鹿に思えるくらい、彼は自由気ままなのだ。
気まぐれに帰って来てはまたいなくなる、を繰り返してばかりのようなやつ。


だから、気にしなくていいのに。

またじきに、へらへら笑って帰ってくる。


きっと。

きっとだ。



「……はやく帰ってきてください」





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