はらり、ひとひら。


それからはあっという間だった。


「─去れ」


牛面に深々と刺さった刀を一気に抜くと、妖の悲鳴ごと飲み込んで消し去ったのだ。な、何が起きてるの。



「怪我ない?椎名さん」

「う、ん」


何が何だがさっぱり分からなくて、肝心の言葉が出てこない。私は頷くことしか出来なかった。


「ちょっとごめん」


神崎君が私の前にしゃがみ込んで首の鎖を取り去ってくれる。指が首や頬に触れるたびビクっとしてしまい、心臓がうるさい。締め付けから解放された首をさすっていると、彼とおもむろに視線がぶつかった。


「驚かせちゃってごめん。それから・・・全部、話すよ」

< 142 / 1,020 >

この作品をシェア

pagetop