はらり、ひとひら。
彼女はとても忙しそうだったが、それでも笑顔は崩さなかった。この仕事が好きなのだろう。
眩しい笑顔は元気が出る。私は茂みの傍からそっと様子を窺っていた。
すると、彼女と一瞬だけ─目が合った気がしたのだ。
「っ」
私は慌てて身を翻した。あぁ見つけてほしいなどと言ったのはどこの誰だ。いざ見られると落ち着かなくて困る。
「馬鹿か…」
とぼとぼ踵を返しねぐらへ帰った。人と話がしたいなど、やはり過ぎた願いか。
けれどどうも目に焼き付いた笑顔が離れず厄介だ。一体なんだというんだ。日は暮れて人が全く通らなくなった頃、私は気になって、もう一度茶屋へ向かった。
さすがにもう家に帰ったか、と思いきや椅子に座り込む彼女がそこにいた。一日の疲れが顔に滲んでいる。女は空を見上げながらため息をひとつ吐き出し、湯気のたった茶を啜った。
…なんという光景だろう。人がこんなに近い。もし昼間のあれが気のせいでないとしたら、声をかけたら─彼女は返事をくれるだろうか。