はらり、ひとひら。


遠のいていく足音を聞きながら、自分の目からぼろぼろと水が垂れるのに気づく。



尤も正確には自分の体ではないんだけど。


霞む視界の中、振り返り小さく手を振る澪が悪魔に見えた。



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【澪side】


やった。全部うまくいった。


込みあがる笑いが抑えきれない。どうしよう。


騙されのこのこ着いて来た巫女も、これの式神の狐も、みんな馬鹿で良かった。



あの祓い屋の小僧だけはやけに鋭くて手間取りそうだと思ったけれど─うまく丸め込めてもらえて助かった。


とにもかくにも、まずは狐。お前からよ。


そのあとは厄介そうなあの小僧。そしてその後は、椎名杏子に関わりを持つ人間ども。雑魚ばかりだからすぐに終わるはず。


そしてすべてが終わったら─


『戻っておいで』


頭の中で甘い声が響く。髪を撫でる優しい手が恋しくて堪らない。

あぁ、そう。私の求めるものはただ一つ。

これは私の復讐なんかじゃない。



すべては、あの方─母様のため。


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