はらり、ひとひら。
「そういえば占いって何でやるんですか? タロット?」
それとも手相とか?
「いいえ。これです」
ででん、と取り出されたのはつるつるの水晶玉。
…で、でました。占い師の商売道具…! 本物?
「古典ですがよく当たるんですよ~! これでアナタの運勢丸わかり! ですよ!」
丸わかり…
ごくりと唾を呑む。
正直このひとの勢いには驚いてしまったけど、占い自体はとても興味があった。
運気上昇中だって言っていたし…なんだろう、何かいいことが起きる前触れだったり?
ちょっとだけワクワクしてきた。
「じゃあ早速みていきますね~。何も考えず、水晶玉を見ていてくださいねぇ」
「はい」
「そう…頭をカラっぽにして……えぇ、上手です」
よくわからないがこれでいいんだろうか?
ひとまずボーッと水晶玉をじーっと見たままにする。
「お。おお…見えてきました、少しずつ………あぁ、見えますねぇ」
ほんとかいな。
聞きたいけど喋ったらまずい気がして我慢。
「…!?」
上機嫌で水晶玉を見つめていたラミーさんの顔つきが突如として変わったのを感じ取る。
その顔には明らかに動揺が浮いていた。
「あの…?」
思わず水晶から目を逸らしてしまったが、それを咎めることすら彼女はしなかった。
「…いえ。すみません、もう、大丈夫ですよ」
「はあ…それで、どうでしたか?」
さっきの動揺はよくある"味付け"みたいなもんじゃないかと思う。
ただじーっと水晶玉を見ていても、お客は退屈してしまうし。
「お客を楽しませるための芸かなにかだろう」
─あっけらかんとした私の考えはすぐに打ち砕かれた。
「………言いづらいのですが、お客さんアナタ…そのぅ、いわゆる死相が…出ていますね」
…は?
しそう。思想? 死相…?
って。
「し、死相!?」
「なっ…んだよそれ!?」
愕然としたのは私だけじゃなかったらしい。
みんなもあんぐり口を開けてラミーさんの言葉を待つ。
「いえそのっホント今一瞬だけ見えてしまっただけなんですけどぅ…! う、…地面……お社、でしょうか? そこに横たわってる、アナタが─」
な、なにそれ。占いは私どちらかと言えば信じるほうだしそういうシャレになんないのはやめてほしい。
「ま…またまた」
冗談ですよね、と笑いかけてもラミーさんはさっきのハイテンションをどこかへ忘れて切羽詰まった表情。
「こんなはずじゃ」とか「ウソだ…」とか、ぶつぶつ小声で呟いているのがとたんに現実味を助長させている。
鳥肌がたった。
…マジですか?
全員が息を呑んでラミーさんの言葉を待つがよほど気が動転しているのかもしれない。
彼女は何も述べない。
がん! と派手な音に肩が跳ねる。
「びっ…くりした……神崎」
誰もが飛鳥と同じ言葉を言ったと思う。
神崎くんは机に思い切り手を叩き付けると、「すみません」と短く謝罪した。
「…あなたの占いが当たるかどうかとか。これが本物かとか…わかりませんけど。友人を怖がらせるのはやめてください」
控え目な声だった。
弾かれるようにラミーさんは立ち上がって、何度も何度も頭を下げた。
「すみません…! ほんと、お気になさらないでくださいね!? 当たらないって評判の占い師ですからワタシ!」
当たらないって自分で貶していいの…?
「あはは…びっくりしたけど、あんまり気にしてないんで大丈夫ですよ」
「ううぅ、すみませぇん~…」
「うわっ泣かないでくださいよ!」
本当に申し訳ないって顔でラミーさんはぺこぺこ頭を下げた。
大丈夫だと言ってもなかなか引き下がらない。
困ったなあ…
しばらくやりとりを繰り返していると、ラミーさんは思い立ったように懐から紙のようなものを取り出した。
「効果も弱い、気休め程度のモノですが…もらってください。持ち主を守るように、お願いしてあります」
ぎゅうと無理やり握らされたそれはよく見ると、お札ではないか。