さらば、ヒャッハー


更に今は黄昏時。
橙の光が山に被さり、別名の逢魔が時らしく、異形に出会えそうな空気の流れを作る。


妖怪退治屋として妖怪が活気になるこんな時間に出歩くなど、さも数多の妖怪に狙ってくださいと言っているようなものだった。


妖怪はあくまでも敵だ。退治屋となるからには妖怪側とて冬月たちを歓迎はしないだろう。しかもか、こんな奥山は妖怪にとって住み心地良い場所。数にしてみれば、指で数えきれるものじゃない。


そんな敵陣、そうしてこの時間、乗り込むだなんて危険極まりないが、冬月たちは堂々と山を闊歩していた。


退治屋として何にも負けないと過信しているわけでもなく、実際にこの山には“強い妖怪はもういなかった”。


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