もっと大切にする~再会のキスは突然に~

「自分が就職して、あの時の葵に全然優しくなかったって、すげぇ後悔した。なんでもっと大切にしてやらなかったんだって、馬鹿な自分に呆れたよ。学生とは…全然違うもんな、社会人は。
学生と違って、やらされてるんじゃない。仕事だから、自分のやることに言い訳はできなくて責任も伴う。そんなこと、全然わかってなかったよ。」

「私はっ、あの頃河合クンがいたから毎日仕事に行けてたよ?河合くんが話を聞いてくれてたから、何とか頑張っていられた。」

それは、本当にそのとおりだから。

看護学校を出ていても実際はなにもできない、なにも知らない自分に、心が挫けてしまいそうだったから。

毎日、話を聞いてくれることが、支えだった。


「でも、もっと大切にするから。」

私の目をしっかり見据えて、はっきり口にするそれに、

「うん、ありがとう。」

素直に嬉しくて、笑みが零れる。

プロポーズみたいなそのセリフに、心臓が早鐘を鳴らす。

< 124 / 148 >

この作品をシェア

pagetop