もっと大切にする~再会のキスは突然に~
「泣くほど、嫌だったか。」
辛そうに顔を背ける河合クンに、はじめて自分が泣いていることに気付く。
「悪かった………オレは、葵だから抱きたかっただけだ。」
そういうと私に背を向けあっさりとドアから出て行く。
力なくその場にしゃがみ込む私は、濡れる頬を拭うこともなくそのまま嗚咽を漏らすしかなかった。
私だから抱きたかった、私をオレのものだと言った河合クンの言葉をどう受け止めようか、
私の投げつけた言葉を彼がどう受け止めたであろうか、
河合クンに触れられた場所がジンジンすることをどう忘れようか。
何も答えが出せないまま、私はまた心の片隅にそれを追いやり、蓋をする。
いつまでたっても弱虫で意地っ張りで素直になれない私は、今日のこともやっぱりなかったことにしようと自分に嘘をつく。