もっと大切にする~再会のキスは突然に~

それから、19時に私の携帯が震える事はなく、院内で河合クンの後ろ姿に遭遇することもなくなった。

その姿を見ることがなくなれば、胸がチクチクすることも頭がぐるぐるすることもなくて。

忙しい業務の繰り返しで、家に帰れば寝るだけで、このまま触れずにいたらもう忘れてしまえそうだった。河合クンのことも、麗奈さんのことも、心に閉じ込めたキモチも。



歳をとったのか、この仕事に慣れたのか、愛だの恋だのに仕事のペースを乱されることもなくて、いつもどおりいることに慣れている自分。

それが大人になることで、新人のころの情緒不安定だった私が成長した結果だと思っていた。

この仕事では、仕事中に自分のことを考える余裕なんてこれっぽっちもなくて、次には何をするべきかと考えながら体を動かす中で、悲しいことや辛いことを心に押し込めることで成長したつもりになっていた。

でも、それはなくなってしまったんじゃなくて、心の隅に押し込められているだけで何の解決もされてなくって。

河合クンへの気持ちも、あの頃の思いも自分では何も言い訳がついていなくて、こんなにも私を惑わせている。
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