美味しい時間

課長に馬乗りの形になり、両肩を強く押さえ込む。

「そんな意地悪ばっかり言うと、嫌いになりますよ?」

「カッとなる百花もいいな」

いつも思うけど、この人、私の話ちゃんと聞いてる? 
呆れ顔で口をぽかんと開けていると、足首をぐっと掴まれた。

「うわぁっ」

「それにしても、いい眺め」

「いい眺め?」

何を言っているのか分からない私に、指さしてその場所を教えた。指さした方をゆっくりと辿っていくと。
課長が身体を揺するたびに、ポワンポワンと揺れる2つの胸が……。
む、胸? 嫌な予感がし、血の気が引く思いで目線を下に下ろしていく。
…………。
私、私、全裸じゃなーいっ!!!
恥ずかしさ? 怒り? 訳の分からない気持ちに、ぷるぷる震えながら課長を見てみると、Tシャツに下着という姿だった。
髪を振り乱しイヤイヤと頭を振ると、その場から逃げるために課長の手を足首から力任せに剥がす。

「い、痛いなぁ」

そんなこと、知ったことかっ。課長を無視して着るものを探す。
あっ……。
ここに来てすぐに、お風呂に入ったことを思い出した。

「もうっ!!」

キョロキョロ辺りを見渡すとバスタオルが目に入り、さっと掴むと身体に巻く。

「課長なんか、大ッキライっ!!!」

そう捨て台詞を叫ぶと、トイレへと駆け込んだ。
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