美味しい時間

お茶を持ってフロアに戻ると、何人かの社員が出勤してきていた。

「あれ? 藤野さん、もう来てたんだ。おはよう」

「おはようございます。珍しく早く起きちゃって」

本当に早く起きたんだから、嘘じゃないよね。
でも課長は、少しだけ肩を震わせて笑ってるみたい。

結構笑い上戸だったんだ……。

昨日といい今日といい、ほんと課長には困ってしまう。
バレたらどうするんだろう。

しかし、そんな心配は無用だった。
先輩社員のお姉様たちがフロアに入ってくると、それまでの態度が急変。
背筋をぴんと伸ばし、いつものクールで知的、でも笑顔はキュート……。
美和先輩がいつも言っている課長が、そこに出来上がっていた。

はははっ……。できる男は違うねぇ~。

また、いつもの光景が目の前で繰り広げられている。
今日も、ばっちりメイクとふわっと女らしい巻き髪。
「美味しいお菓子が手に入ったので、どうぞ」とか「今日のお昼、ご一緒しません?」とか……。
それを笑顔を振りまいて、上手にあしらっていく。
それは本当にいつもと変わらない光景。見慣れてるはずなのに……。
なぜだか胸がチクンと痛んだ。





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