美味しい時間

ランチも済ませ会社に戻ると、給湯室に向かった。
紙コップに冷たい水を注ぎ、一気に飲み干す。

「あそこのサンドイッチ、大好きなのになぁ」

いつもならペロッと食べてしまい追加するときもあるくらいなのに、今日は何故だか食欲がなく残してしまった。
美和先輩も、そんな私を見て心配してくれたんだけど……。

「どこも不調な感じ、しないんだけどなぁ」

もう一杯お水を飲んでから、フロアに戻ることにした。
フロアに戻ると、夕刻まで帰ってこないはずの課長がデスクにいた。
ささっと身なりを整えて、歩き出す。
課長の前をペコリと頭を下げ通りすぎようとしたら、いきなり声をかけられた。

「藤野。ちょっと資料室まで付き合え」

びっくりして心臓が飛び跳ねる。

「は、はいっ」

大きな声で返事をすると、先に席に着いていた美和先輩がプッと噴出し笑う。
それをジェスチャーで窘めると、スタスタと歩いて行く課長の後を追った。



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