美味しい時間
「こんな熱い身体して。もっと自分のこと気にしろよ」
口調は厳しいのに、抱きしめてる腕は優しい。
「まっ、仕事中は俺のこと気にし過ぎて、それどこじゃないか」
そう言ってふっと鼻で笑うと、抱きしめてる手で背中を摩る。
「イヤっ……気づいてたんですか? 恥ずかしい……」
指先から伝わる体温が、今まで以上に身体を熱くする。
その感触とくすぐったさに身を捩ると、今度はおかしそうに微笑んだ。
「あんな熱い視線送られりゃ、誰でも気づくって」
背中をポンポンっと軽く叩くと、もう一度ギュッと抱きしめる。
すると、自分の両腕が無意識に動き、課長の身体にしがみついてしまった。
「何? 今日は積極的じゃん。でもここ会社だし、お前病人だからなぁ」
会社だし病人だから? 何、考えてるの?
「惜しいけど、お楽しみはまた今度」
お楽しみ? お楽しみって、まさか……。その意味が分かると、顔を真っ赤にして課長の胸に埋める。
「そうやって、すぐからかうんですね」
「百花が可愛いからいけない」
何を言っても勝てそうにない……。