美味しい時間
「って、こんなことしようと思ったんじゃないんだ。お前、もう帰れ」
「えっ?」
「俺が家まで送ってやるから」
え? え? えぇぇぇぇ~っ!?
それってマズイでしょっ。私と課長の仲は美和先輩しか知らないのに……。
資料室まで一緒に来るのだって、躊躇したんだから。フロアを出るときの、お姉様たちの顔を思い出すだけで……怖いわぁ~。
「仕事もまだ残ってるし、大丈夫ですよ」
「俺の言うこと聞けない?」
うっ、課長も怖い。
なんか、凄まれてるんですけど……。
一度こうなっちゃうと、課長は強引だからなぁ。
「フロアに戻ったら、俺の言うことに返事だけしてればいいから」
ねっ、言ったとおりでしょ。
はぁ……。自信満々の課長に任せておけば、何もかもうまくいくのは分かってるんだけど……。
ゆっくり身体を離すと、苦笑しながら課長の顔を見る。
そして小さく呟いた。
「ほんと強引……」
つい言ってしまったその言葉に、すぐ反応する。
「ふ~ん、笑う余裕あるんだ。じゃあこれからは、もっと強引にいくか」
その強引がどんなことなのか……。
ちょっと不安、でもちょっと期待? する私がいた。