悪魔の熱情リブレット

信頼の喪失から零れた涙が、喜びの雫に変わる。

「アンドラス!!アンドラス!」

何度だって呼びたい名前。

「アンドラス!思い出したの!」

しかし、返事は無かった。

「アンドラス…?」

周囲を見回す。

けれど愛しい悪魔の姿はどこにもない。

「何で!?さっきまでここにいたのに!」

そして気づいた。

記憶が呼び戻された時、瞬間的に意識が飛んだことを。

「あの時に…?」

アンドラスがいた場所に近寄る。

触るとミシミシ言う木の柵にそっと触れた。

「アンドラス…?」

まさかと思い、徐に下を見る。




「アンドラス!!!!」





「まさか」だった。

白い悪魔は自ら、展望台から飛び降りたのだった。

落下した彼の体が地にぶつかり転がる。

白い衣の下からじわじわと血が滲み出ているのがアウレリアの目に入った。



「いやあああぁぁ!!!!!!!!!」




悪い予感しかしなかった。






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