神様がくれた夏
だって笑うしかないじゃん。
それしかあたしにはできない。
もう何もできないし、何もしたくない。
気分屋な先輩は、こうしてふらりとやって来てはあたしと会話をしキスをする。
そして最後にはこう言う。
「じゃあな、水涼」
先輩はあたしの頭をくしゃりと撫でては教室へと戻っていった。
あたしはそんな先輩の背中を見つめ、やっと行ってくれたと、思ってしまう。
どうしてなのだろう。
もう少しだけと、引き止めたいとすら思わなくなってしまった。
あの日から、あたしは先輩に対して〝ピンク〟な感情が何もなくなってしまったのだ。
あるのは恐怖に似たような感情のみ。