窓際のブラウニー


「おはようございます!!足元気を付けてください!」


爽やかな笑顔と共に、彼の鮮やかなブルーのセーターが目に入る。


夫は絶対に着ないような服。



差し伸べられた手をまた無視したお義母さんは、無理して手すりに手を伸ばす。




慣れているのか、彼は悲しい顔もせずに笑顔でお義母さんに微笑んだ。



「おはようございます!」


私に向けられた笑顔も、とても優しい。




「あ!!」



彼に見とれていた私は、階段に足を滑らせた。



さっきお義母さんに差し伸べた手と同じ手を私に向けた。



「すみません…」



その手は、私の知っている手ではなかった。


温かく、


がっしりとしていて、


でも柔らかい気持ちの良い感触だった。






恥ずかしそうに目をそらす私に、彼が言う。



「お疲れ様です。」


小さな声で、そっと…





わかってくれる人がいる。


私の苦労を理解してくれる人がここにいる。





それだけで、救われた。



わざとらしく濡れた右肩をハンカチで拭くお義母さん。


そのハンカチで曇った窓を拭き、外を眺める。




< 50 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop