恋率方程式




アルトというこの青年。
見てみるのも悪くない。
そう思い口元を歪ませた。
先程のニュースで写っていたアルトはイチの目には偽善者としかインプットされていない。

イチにとって世の中そうとしか思えないのだ。人は誰しも疑いを持つ。やがて疑いは憎しみや怒りに変わり果てる。

それが嫌だった。
でもまさに自分はそうだった。だから感情を表すのを止めた。


アルトの日課には夜10時には寝るとかいてある。やけに早いと思ったが、彼女にとって好都合。なにせ仕事が早く終わるから。


そしてパソコンの電源を落とす。
ベッドにゴロリと寝転がり、何もない天井を見つめる。

いつからだろうか。
こんな歪んだ生活を送り始めたのは。

自分の中ではもう『過去』としか思わない記憶。闇へと落ちたその一歩の印しなどどうでもよかった。

当時も感情の起伏があった訳でもないし、ましてや今は一欠けらも感情など入っていない。


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