。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。


それでも溢れる涙を堪え切れなくて、


「ぅー…無理ぃ……」


あたしはとうとう泣き出した。


「ごめん!ほんまにごめん!泣かせるつもりやなかったんや」


戒がとたんにわたわた。


焦ったようにあたしの両肩を掴み、必死に宥めようと頭を撫でる。


あたしは慌てて頭を振った。


「戒のせいじゃない……悪いのはあたしだし」


「いや…俺かてそうなること予想できんかったわけやないのに、行かせたし。


でも、まさかあいつがそんな暴挙に出るとは思わんかったんや」


「へ…?」


鼻をすすりながら顔を上げると、戒が苦笑いを漏らしてそっとあたしの頬に伝う涙を指で拭った。


「あいつの気持ちは知っとったけど、あいつがそんな風に出るとは思わんかった。


まぁ考えてみりゃあいつだって男だし。そこんとこ考えが甘かった言うか…」


バツが悪そうに俯いて、


「ほんまにごめんな」


戒は無理やりと言った感じで口元に笑顔を浮かべた。


「……怒ってるんじゃないの?」


おずおずと聞くと、


「そらめっちゃ腹立たしいで。俺の女になにさらしとんのじゃぁ!!って今からでもカチコミかけたい気分や」


え゛!そ、それは怖すぎる!


戒と叔父貴のマジ喧嘩なんて、絶対血を見るに決まってるし!


ってか“カチコミ”ってところがヤクザ丸出しだよ。
※カチコミとはヤクザ間の俗語で、主に殴りこみを指します♪




「…と、まぁキスのことはめっちゃムカつくけど…あいつにね。



でもこうして朔羅が俺を選んでくれたこと、





俺はそれだけで充分」






戒が優しい声音で言って、あたしを抱き寄せてきた。








< 152 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop