。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
―――
「死ぬかと思った」
龍崎グループ本社のどでかいビルの前に車を横付けすると、鴇田がよろけるように車を出た。
青い顔をしながらも、「お嬢たちはどちらへ?」と聞いてくる。
まぁ当然だよな。
このこと絶対叔父貴の耳に入るだろうケド、今はあたしたち三人でまたも作戦会議だ。
叔父貴に何か聞かれる前に考えをまとめておきたい。
「俺たちは会議室~ってことで、あばよ」
戒が窓からひらひら手を振り、今は多くを語りたくないのかキョウスケはすぐに車を発車させようとギアを入れ代える。
発車する間際、
「お嬢―――助けていただいて、ありがとうございました」
鴇田の声を聞いた。
バックミラーであいつを見ると、あいつはいつまでもあたしたちの車を見送っていた。
さっきちらっと見えた、表情はいつも陰険な何か企んでるような笑みではなく、どこか安心したような笑顔が浮かんでいて、
あたしはそれに驚いた。
何故あいつを助けたかって??
そんなの知らねぇよ。
体が勝手に動いただけだから―――
何でだろう、あたしはあいつを助けてばかりいる気がする。
でも同じだけあたしは―――あいつに守られてる。あの細いのに力強い腕で。
あたしが叔父貴の大切な姪だから―――理由は簡単で、それ以外にありえないって言うのに、
あの腕で守られたとき、それ以外の何かの感情が流れてきたように
思えた。
―――……
「ってか会議室って“ここ”かよ。ってか“また”ここ?」
あたしは若干うんざり気味でカラオケボックスの部屋でため息をついた。
「外だと誰が聞いてるか分かんねぇだろ?家じゃマサさんが目を光らせてるし。冷暖房も完備だし、ドリンクもあるし~♪」
と、すっかりいつもの調子を取り戻した戒がご機嫌にアイスコーヒーのストローに口を付ける。
「それにしても一体誰なのか?」
キョウスケもいつもの調子―――ってかいつもこんな感じだからこれが冷静なのかどうか分かんねぇけど。
「前回俺があそこで狙われたのとはまた訳が違うよな。今回は鴇田が標的だったし」
「そう見せかけてるかもしれませんよ。戒さんもそう思ってるんでしょう?だから俺に運転を任せた。
普段俺の車に乗るのをあんなに嫌がるくせに」
と、ぶつぶつ。
やっぱ普段でもああなのか……できればリコをこいつとドライブに行かせたくないな。
って、考えが逸れてる!
「まぁその可能性は低いけどな。あれが演技だとしたらかなりのリスクだ。下手したら命を失う可能性ありだからな」
そうだよ。
だってあの銃口―――最初から狙いは鴇田だったもん。