。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
あたしが黙って唇を噛んでいると、玄蛇は慌しくノートパソコンを広げた。
「どうするつもり?」
半ばやけになって乱暴に髪を掻き揚げて玄蛇を睨むと、
「まだ間に合う。敵は大半をダウンロードしているだろうが、君のケータイの電磁波サインを追跡して、残りを阻止しよう」
「そんなことできるの?」
あたしがノートパソコンを覗き込むと、玄蛇はあたしの方を見ることもせずにキーボードを操りながら、
「できるさ。だてに長く生きてるわけじゃないんでね」
ちっとも焦っていない様子でさらりと答えながら、その手さばきはかなりのものだった。
あたしはまさかデータが盗まれてることなんて知らず、その対処方法も分からない。
「君は私の痕跡を一々消去してると思うがね、それでもどこかで何か繋がりを見つけられると厄介だ」
「ええ、そうね」
玄蛇の言う通り、あたしは玄蛇との通話やメールをその都度消去している。
だけど響輔が何かを見つけたら―――……
焦点の合わない視線で、ただじっと玄蛇の指先を見つめながら―――
あたしは響輔の姿を思い出していた。
バカみたい。
あたし一人でドキドキしたり、切なくなったり…
最初からあいつはあたしとは違う世界で生きていて―――これからも交わることがない
永遠にね
そんなこと分かっていたじゃない。
何浮かれてたのよ。大体男に振り回されるなんてあたしらしくない。