。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



―――…その日は予定通り龍崎グループの本社に向かった。


通常通り仕事をこなし、それでも早く帰るよう会長に言われた。


「キリが待ってるだろ?」


なんて含み笑いを浮かべる。


俺はそれに何て返しただろう―――……




――――

――


マンションに帰ると、キリの姿はなかった。


部屋の明かりも消えている。


「キリ…?」


寝室はもちろんのこと、バスルームやリビングを探したが、キリの姿はない。


「キリ―――…朝霧…!」


俺が声を上げると、


バタン


突如玄関の扉が閉まり、キリが平然とした顔で姿を現した。


「あら、早かったのね。ちょっと買い物に出かけてたの。ほら、シャンパン♪」


キリは楽しそうに笑って、長細い麻の袋からシャンパンの瓶を取り出す。


それをテーブルに置こうとして、その手をふっと止めた。






「どうしたの?」







キリが心配そうに眉を寄せ、俺は額に手を置いた。


当然居ると思ってたから、そこにその姿がなくて―――





俺は一瞬、どうしようもない消失感に襲われたのだ。






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