。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。







響輔の腕の拘束をはがそうと俺はもがいた。


向かい側で龍崎 琢磨も同じように鴇田の腕を払いのけようとしている。


見かねた秘書のキリさんが割り込んできて、





「何やってるんですか!お嬢さんの前ですよ」





と龍崎 琢磨を睨み上げた。


その言葉で目が覚めたって言うのかな。


俺たちは揃って朔羅の方を見た。


朔羅は眉を寄せて、どうすればいいのか分からないと言った感じでおろおろと俺たちを交互に見つめている。


「会長!冷静になってください」


言葉とは反対に鴇田は乱暴な仕草で強引に龍崎 琢磨の腕を引いて店外に引っ張っていった。


「離せ鴇田!」と龍崎 琢磨は何事か喚いていたが、それでも鴇田に引っ張られていく。


「響輔、そっちは頼んだぞ」


鴇田はまだ羽交い絞めにされている俺の方を見て、眉間に皺をよせていた。


「キリさん、水用意してくれます?」


響輔は龍崎 琢磨の秘書のキリさんに真剣な顔で聞くと、キリさんは慌ててスタッフに水を持ってこさせるように頼んだ。


スタッフの一人がペットボトルに入った水を持ってくるまで、俺は両手を後ろで拘束されたまま。


響輔は乱暴にペットボトルの蓋を開けると、


バシャバシャっ!


俺の頭上から思い切り水をぶかっけやがった。


「冷てっ!お前、何しやがんだ!!」


思わず響輔を見上げると、





「頭冷えましたか?




一体あなた何やってはるんですか!」






珍しく響輔が声を荒げて俺に怒鳴った。


「お嬢の前で会長と喧嘩やなんて」


「ホントだよ、お前どうしちゃったんだよ。こんな大勢居るところで」


と朔羅は響輔とキリさん、そしてその他のスタッフが数人怯えたようにしているのを見て……


ぶっかけられた水で頭が冷えたってのもあって…


俺は冷静さを取り戻すと、ゆっくりと朔羅を見上げた。




朔羅は怒っている―――と言うよりも、何故俺がこんなことをしたのか分からない、


と言う視線を俺に向けていて、





俺は完全に正気に戻った。




< 372 / 776 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop