。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。
「ほら。服着てください」
脱ぎ捨てた俺のTシャツを放って寄越すと、響輔は不機嫌そうに腕を組んだ。ってか完全に怒ってるなこれ…
俺は響輔から受け取ったTシャツに腕を通すと、
「お前大丈夫かよ。何があったんだよ」
と朔羅がさっきの険しい視線から一転、ちょっと心配そうに眉を寄せて俺を覗き込んできた。
「……大丈夫。ちょっと言い合いになっただけやから」
それだけ言うと俺は俯いて、口の端を押さえた。
「…ってー…」
思い切りやりやがって。
だけどこのリアルな痛みが、さっき龍崎 琢磨から聞いた“スネーク”の話をより現実身あるものと思い出させてくれた。
あいつが“スネーク”の話を持ち出しに、俺が試着していたフィッティングルームに入ってきたからだ。
「血……出てる…」
朔羅が慌ててハンカチを取り出すと、俺の口元にそっと当てた。
ハンカチに染みこんだ僅かな香り
チェリーブロッサムが
ふわりと香ってきた。
朔羅―――……
俺は何としてでも朔羅を守り抜かねばならない。
龍崎 琢磨から言われなくても、こいつに傷一つ負わせることはできない。
「響輔、ちょっと来い」
俺は響輔の腕を取ると、棚の影までこいつを引っ張っていった。
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