。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



マサをはじめとする組員たちは、呆れながら、はたまた安心したような顔でぞろぞろと帰っていく。


残されたあたしは急に不安になって、戒の袖をぎゅっと握った。


「な、なぁキョウスケ本当にどこいったんだよ。まさかイチのヤツに呼び出されて会いに行ったんじゃねぇのか?


イチのやつ、絶対キョウスケを恨んでるはずだから、あいつがイチに殺されたら……」


そんなこと絶対にない、とは言い切れないし。


「大丈夫だって。キョウスケがあの女にあっさり殺られるへましねぇよ」


と苦笑いをしていたものの、


「本当に行き先を告げていかなかったのか?」とあたしに確認してきた。


「聞いてない。あ、でもお前にDSを返してくれって言ってたよ?」


外出する間際、キョウスケが言っていた言葉を思い出す。


「DS?いや、俺借りてねぇけど。ってかあいつだって持ってねぇだろ」


戒は考えるように顎に手を置いた。


「な、何かの暗号かな…でもあたしにまで教えていかないって…」


戒はしばらくの間考え込むように首を捻っていたが、やがてちょっと目を細めると、


「あいつの勘違いだろ?」と結論を出し、ちょっと笑いながらあたしを見た。


「大丈夫だって。勘ぐりすぎだ。あいつだって大学のツレとか居るし。そいつらと遊んでんだろ?」


そう宥められて、キョウスケと付き合いが長い戒が言うなら間違いないか、と思った。


ちょっと安心して頬を緩めると、


「そうだ、あたし風呂入ろうとしてたんだ」と立ち上がった。


マクラを追いかけてたら、こうなっちまったわけで。


「おう、行って来い」


戒が襖の向こうを促して、あたしは言われたまま戒の部屋を出た。


襖を閉める瞬間、






戒がさっきの柔らかい表情から一転―――険しい表情を浮かべていたことを





このときのあたしは知らなかった。





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