。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



あのときのあたしは正常じゃなかったんだ。


今ならそう思える。


だってあたしの手を下さずとも、関係のないところで勝手に死んでくれたじゃない。


手間が省けた。ラッキーじゃない。


そう思えるのに……


でもあの時は―――どうしようもなく、




怖かった。




何を考えていたんだろう。


あたしは響輔に電話を掛けていた。


幸いにも、前日に新幹線で鉢合わせたとき番号は交換していたのだ。(←強引に交換したとも言える)


『……もしもし?』


響輔の怪訝そうなくぐもった声を聞いて、あたしは何かを言う前に、


涙を流して嗚咽を漏らしていた。


何故だか知らないけど、安心した。何故か知らないけど、大丈夫な気がした。


根拠なんてないけれど、その一言で全てが「大丈夫」な気がした。


『どないしたん?』


響輔の声が心配そうにくぐもって、あたしはとうとう声を上げて泣いた。


「パ……ううん、鴇田…が…!」


それから二、三会話をした気がする。何か聞かれて、それにどう答えたのか分からなかった。


気付いたら通話は終わっていて、涙を流したまま呆然とケータイを握り締め、


ケータイを握ったまま、あたしは一歩も動くことができずに、その場に立ちすくんでいた。


それから何分経ったのだろう。




響輔があたしの泊まっているホテルの部屋に来てくれた。






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