。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



「ちょっと!龍崎くんっ!あたしたちを置いていく気!?」


あたしは夜の学校も平気だけど、新垣 エリナと二人きりなんて状態にしないでよ!と言う意味で追いかけると、


新垣 エリナも「龍崎くん、川上さん待って」一人で怖いのか慌てて追ってきた。


「朔羅の声が聞こえたんだよ」


龍崎くんは真剣な顔で辺りをきょろきょろ。


「……聞こえた?」


一応新垣 エリナに聞いてみると、新垣 エリナはぶんぶん首を横に振った。


「確かに聞こえた。小さいけど。


くそっ!匂いが混ざってて朔羅の香水が分かんねぇ」


匂い……香水…?


あんたは犬か!と突っ込みそうになった。


新垣 エリナは急に態度が変わった龍崎くんの様子に驚いているのか、おろおろと辺りを見渡しているだけだ。


「朔羅に電話してみよう。何かあったのかも」


慌ててケータイを取り出すも、


『電源が切られているか、電波の届かない場所に…』の虚しい機械音が聞こえてあたしはケータイを閉じた。


「だめだ、繋がらないよ!龍崎くんの言った通り何かあったのかも」


急に不安になって龍崎くんを見上げると、


「電源が入ってないとなるとGPSも使えねぇな」


パチン


龍崎くんがケータイを閉じたときだった。


「待て!


静かに。


悪りぃけど、ちょっと離れてくれるか?」


龍崎くんは唇に手をあて、あたしたちから離れるように一歩進み出ると、廊下の窓から顔を出した。


「な、何やってるの…?」


新垣 エリナが不安そうにあたしに聞いてきたけど、あたしだってわかんないし…


「風向きは南南東。風速は3mってとこか。


川上!地図貸せっ」


前を向いたまま龍崎くんは手を向けてきて、あたしは慌てて地図を龍崎くんに手渡した。


「風が朔羅の香りを運んできた。


向きと速さを計算すると、渡り廊下を渡った旧校舎……?なんてあるのかここ。


とにかくこの辺りだ」


龍崎くんが旧校舎あたりをトントンと指で叩いて、あたしと新垣 エリナは顔を見合わせた。



本当にここに朔羅が??





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