。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



正直、半信半疑だった。


旧校舎は今回のきも試しのコースに入ってないし。


第一朔羅の香水なんてあたしたちは気付かなかった。特別に鼻が悪いわけではないし。(新垣 エリナの方は知らないけど)


「朔羅!」


「朔羅ー?」


「龍崎さん」


三人で朔羅を呼んでいるときだった。


「しくしくしく……」


女幽霊のすすり泣き!?


じゃなくて!これっ朔羅の声だ!!


嘘!


ホントに居たよ。龍崎くん、凄い!!


声は「第三理科室」と書かれた部屋から聞こえてきて、あたしたちは慌ててその中に入った。


部屋の隅で朔羅がうずくまるようにして泣いていて、その近くには千里が床に腰を降ろしたまま困り果てたように眉を寄せていた。


「朔羅!大丈夫か!?」


龍崎くんの登場に、朔羅がぱっと顔を上げる。


「か…戒……」


涙が溜まった目を龍崎くんに向けると、


「戒!良かった!千里が……!」と言って朔羅は龍崎くんに駆け寄った。


「千里、どうしたの?」


あたしが聞くと、千里は恥ずかしそうに苦笑い。


「リコも来てくれたんだな!…それから…」


朔羅は新垣 エリナを見ると「?」マークを浮かべた。


「あー、ちょっと成り行きで一緒に来ることになったんだ。ところで一ノ瀬どうしたんだよ」





「…棚から物が落ちてきて…千里があたしを庇って足に怪我したみてぇなんだよ……



痛くて動けないみたい…」





朔羅が泣き声で何とか説明をすると、龍崎くんは朔羅の頭を優しく撫であげて






「もう大丈夫だ。俺がついてるから」





本当に優しい声で囁くと、朔羅は安心したのか、わっと泣き出し龍崎くんの胸に飛び込んだ。




あたしには



朔羅の声が聞こえなかったし、香りだって気付かなかった。



あたしには―――





でも龍崎くんには分かったんだよね。





それって二人の仲に言葉では説明できない絆……



二人を結びつける深い愛があるからだ。




去年勉強した漢文の授業で習った「長恨歌」の


『天にあっては比翼の鳥のように。 地にあっては連理の枝のように』


の一文を思い出す。





二人がぎゅっと力を込めて抱き合う姿はまるで比翼の鳥。





二匹の龍が尾を絡ませて




一体になっているように





見えた。




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