。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅲ・*・。。*・。



「龍崎さんはいいな」


新垣 エリナはぽつりと呟いて俺は目をまばたいた。


「優しい彼が居て。守ってくれる彼がいて」


「……買いかぶりすぎだよ。俺は優しくなんてない」


「そっかな……優しいよ。今だってあたしが怖くない道を選んでくれたり」


「男ならとーぜん♪」


俺はわざとらしくおどけて、だけど新垣 エリナはそれに笑顔を返すことなく


ちょっと立ち止まって無表情に俺を見上げてきた。





「龍崎くんて、本当は―――何者なの?」





その質問には俺の方が驚いた。


「何でそんな質問。俺はどこにでも居るこーこーせーだよ?」


これ以上勘ぐられたら厄介だ。


俺はわざと軽く笑って、


「こっちの方が近道だ」と言い話題を変えるよう階段を指し示した。


この先に職員室がある。教師の一人ぐらい待機してるだろう。


新垣 エリナもそれ以上は深く突っ込んでこずに、大人しく俺のあとについてきた。




本当は―――何者……ねぇ



何で突然そんなことを言い出したのか気になったが、今はとりあえず一ノ瀬の怪我を教師に報せるのが先だ。


先を急ごうとして自然足が速くなり、新垣 エリナも慌てて追ってくる。


階段を駆け下りている最中だった。


「龍崎くん、待っ…!」


声を掛けられて振り向くと、暗くて足元が見えなかったのか新垣 エリナが階段のステップを踏み外した。






「危ねっ」


「キャっ!」




俺が新垣 エリナを支えるのと、新垣 エリナが俺の肩に掴まるのが同時だった。






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